「もしかして、自分はAGA?」
「脱毛症の治療はどうすればできるの?」
「そもそもAGAとはどういう意味?」
これらの不安は薄毛にお悩みの方に多いものです。
AGAは男性の薄毛の要因といえます。
本記事ではAGAが一体どのように進行するのか、その原因や薬の種類、治療の効果などを詳しく紹介していきましょう。
AGAとは何の略?日本人男性の3割を占める脱毛症
AGAとは男性型脱毛症を差し、”Androgenetic Alopecia”の略称です。
男性の薄毛のほとんどはAGAからくるものといわれており、日本皮膚科学会ガイドラインによれば日本人男性の約3割がAGAを発症しています。
AGAの特徴は突然髪がごっそり抜け落ちるのではなく、徐々に髪の毛痩せや抜け毛、短毛化が進む点です。
初めは違和感を感じる程度の変化かもしれませんが、放置すると重度の薄毛につながる可能性があります。
また、AGAは生活習慣や食事、ヘアケアなどの改善で治るものではありません。
AGAによる薄毛の進行を食い止めたり発毛を促すには、クリニックでの治療が必要です。
「睡眠不足が続いているから」、「食生活が悪いから」と日常生活に薄毛の原因があると思われる方がいますが、AGAの発症に生活習慣はほぼ関係がありません。
AGAの特徴とは?進行パターンは9つ
AGAは脱毛が生じる部位に応じて「O字型」や「M字型」、「U字型」と呼ばれるように、進行にパターンがあります。
AGAの進行パターンを9つの段階に分類したのが「ハミルトン・ノーウッド分類」といわれるものです。
下記ではハミルトン・ノーウッド分類の9段階にある症状を解説しましょう。
段階 | 症状 |
Ⅰ型 | 初期の状態。額の生え際の後退がややあるが、薄毛の前兆に気づかないケースが多い。 |
Ⅱ形 | 額の生え際が少し後退した状態。生え際の形がM字型になり始めるが、薄毛が目立つわけではない。 |
Ⅱvertex型 | 額の生え際が後退するとともに、頭頂部にもO字型の薄毛ができ始める。 |
Ⅲ型 | Ⅱ型の進行により、額の生え際が深く後退している状態。また、髪全体のボリュームも少なくなり始めている。 |
Ⅲvertex型 | Ⅲ型の状態に頭頂部の薄毛が加わった状態。 |
Ⅳ型 | M字型の薄毛とO字型の薄毛が顕著に進行している状態。 |
Ⅴ型 | M字型の薄毛とO字型の薄毛がつながりかけている状態。 |
Ⅵ型 | M字型の薄毛とO字型の薄毛が進行し、つながった状態。 |
Ⅶ型 | Ⅵ型がさらに進行し、側頭部にも薄毛が見られる状態。 |
ハミルトン・ノーウッド分類は個々人の症状に合ったAGA治療を進めるうえで、指標として用いられています。
AGAは進行し続ける?毛髪量の変化について
AGAには進行性の性質があるため、放置しておくと毛髪量は減少し続けます。
適切な治療を怠ると重度の薄毛につながるリスクがあるため、早い段階でクリニックを受診しなければなりません。
1,553名のAGA罹患者を対象に行われたとある研究では、1インチ(約2.5cm)の円内に生えている900本程度の毛髪が、5年後には250本程度減少していることがわかりました。
正常な頭皮環境でも毎日50〜100本程度の抜け毛がありますが、これよりも明らかに多い抜け毛がある場合、AGAの進行の只中にいるのかもしれません。
AGAはなぜ起きる?脱毛症の原因を解説
AGAは男性ホルモン「DHT」が影響して起こる脱毛症です。
このDHTは、骨量・筋量を強くする主要な男性ホルモン「テストステロン」が体内の酸化酵素と結合することで生まれます。
DHTが毛根にある毛乳頭で男性ホルモン受容体と結合して生まれるのが、強力な脱毛因子です。
脱毛因子は髪を作る毛母細胞にダメージを与え、髪の正常な発育を阻害します。
AGAの特徴は、脱毛因子の作用により髪の成長期が大幅に短くなり、短毛化や軟毛化、抜け毛が徐々に増える点です。
AGAでは額の生え際や頭頂部を中心に薄毛が広がりますが、この理由はDHT発生の引き金となる酸化酵素が前頭部と頭頂部に多い点にあります。
AGAによるヘアサイクルの乱れとは?
AGAによるボリュームダウンや薄毛の進行には、ヘアサイクルの乱れが深く関係しています。
ヘアサイクルとは髪の毛が毛根に生まれてから自然に抜け落ちるまでの周期を指し、下記の3段階を繰り返すものです。
成長期 | 髪が毛根に生まれてから太く長く伸びる時期 |
退行期 | 髪の成長が徐々に止まる時期 |
休止期 | 髪の成長が完全に止まり抜け落ちるまでの時期 |
通常髪の成長期は2〜6年ほど続きますが、AGAの場合成長期が数ヶ月程度と大幅に短くなります。
成長期の短縮で髪が未熟なまま抜け落ちてしまうのがAGAの症状です。
ただし、AGAによる脱毛は急激に起こるわけではありません。
一本一本の髪それぞれに異なるヘアサイクルがあるため、抜け落ちるタイミングも髪の状態によってバラバラです。
したがってAGAの初期ではあまり顕著な髪の変化が見られませんが、次第に薄毛の進行が目に見えてわかるようになります。
これってAGAの前兆?セルフチェックをしてみよう
薄毛が気になり始めたら、まずはAGAのセルフチェックをしてみましょう。
下記の項目に該当する場合、AGAを発症している可能性があります。
・薄毛家系である
・明らかな抜け毛の増加がある
・抜けた毛の形質が細く短いものばかりである
・頭頂部の地肌が透けて見える
・額の生え際の形が変わった
・髪質が細くなった
AGAの発症に深く関与する酸化酵素の活性度や男性ホルモン受容体の感受性は、遺伝で引き継がれるものです。
特に、男性ホルモン受容体の感受性は母親の染色体から受け継ぐ性質なので、母方の家系に薄毛の親族がいる場合は、ご自身もAGAになりやすい体質かもしれません。
その他、抜け落ちた髪の毛の大半が細く短い場合も注意が必要です。
ヘアサイクルの乱れによって髪が十分に成長できないまま抜け落ちてしまっている可能性があります。
AGAにある治療法とは?種類や効果を解説
AGAの治療には次の3つの方法があります。
・投薬
・メソセラピー
・植毛
生活習慣の改善や適切なヘアケアなどは頭皮環境を整えられますが、AGAの症状をしっかりと改善できるものではありません。
上記3つの治療は効率的にAGAの改善を目指せるものです。
以下ではそれぞれの治療法の詳細を解説していきましょう。
投薬治療
内服薬や外用薬を用いて脱毛の防止や発毛に働きかけるのが投薬治療です。
代表的な有効成分には次に挙げる3つがあります。
・フィナステリド
・デュタステリド
・ミノキシジル
これらは主に内服薬の有効成分として用いられていますが、ミノキシジルは外用薬の成分としても有用です。
ミノキシジル配合の外用薬は市販でも手に入るので、一度は目にしたことがある方も多いでしょう。
フィナステリドもしくはデュタステリドの内服薬とミノキシジルの外用薬を併用して治療が進められるケースが一般的です。
注入療法
AGAの注入療法では、頭皮に成長因子や医薬成分、ビタミンなどを注入し毛母細胞の活性を促します。
注入の仕方は注射針による注入や電子パルス照射、ガス噴霧などです。
注入療法には次の2種類があります。
治療名 | 内容 |
メソセラピー | ・成長因子や医薬成分、ビタミンなどを頭皮に注入する。・注入薬の中身はクリニックによって異なる。 |
HARG療法 | ・150種類以上の成長因子を含む「HARGカクテル」を用いる。・注入薬の中身は統一されており、どのクリニックでも同一の治療が受けられる。 |
メソセラピーの注入薬は一概には決まっておらず、クリニックによってバラバラです。
HARGカクテルとほぼ同じ成分のメソセラピーがあれば、一方で成長因子よりも栄養成分や医薬成分重視のメソセラピーもあります。
ご自身に合う治療を検討したい場合、事前にクリニックが使用する注入薬の内容を確認しておくと良いでしょう。
自毛植毛
自毛植毛はAGAに罹患していない部位の自毛を採り、薄毛のある部位に移植する治療法です。
自毛植毛の種類には次の5つがあります。
治療名 | 内容 |
FUT法 | メスを使い頭皮ごと切り取り、毛髪を採取する方法。 |
FUE法 | パンチ器具を用いて毛穴ごとに毛髪を抜き取る方法。 |
ニードル法 | ニードルに毛髪を仕込み、頭皮に穴をあけると同時に植毛する方法。 |
ロボット植毛 | 毛髪の採取と移植をロボットが行う方法。 |
Hair Strong植毛 | ハンドメイド植毛とも呼ばれ、極細パンチで毛並みに合わせて植毛を行う方法。 |
施術によって仕上がりやダウンタイム、コストは大きく異なります。
例えばロボット植毛ではスピーディーな植毛が可能ですが、Hair Strong植毛のような繊細さはありません。
それぞれにあるメリットとデメリットを把握した上で、ご自身に合う施術を選びましょう。
AGA治療で一般的な投薬治療とは
AGA治療には複数の種類がありますが、最も一般的なのが投薬治療です。
注入療法や自毛植毛は投薬治療の効果をさらに強めたい場合に用いられるケースが多く、単独でAGA治療を行うことはほとんどありません。
ここで、投薬治療の流れや薬剤にかかる費用、薬剤の特徴などの詳細を解説しましょう。
代表的な治療薬について
AGA治療薬に用いられるのは、次の3つの成分です。
・フィナステリド
・デュタステリド
・ミノキシジル
以下ではそれぞれの特徴を解説します。
フィナステリド
フィナステリドは、AGAの引き金となる酸化酵素を抑制する成分です。
酸化酵素にはⅠ型とⅡ型の2種類がありますが、フィナステリドはⅡ型だけに作用します。
代表的なAGA治療薬であるプロペシアの有効成分は、このフィナステリドです。
デュタステリド
デュタステリドもまたフィナステリドと同様、酸化酵素を抑制する成分です。
ただし、デュタステリドには酸化酵素のⅠ型、Ⅱ型双方への作用があるため、フィナステリドよりも強い効果があります。
デュタステリドを含むAGA治療薬では、ザガーロが有名です。
ミノキシジル
ミノキシジルには血管拡張作用があり、血流を良くすることで発毛を促す効果があります。
ミノキシジルは内服薬と外用薬の両方に用いられ、外用薬はドラッグストアでも入手が可能です。
ミノキシジルの内服薬は外用薬よりも強い発毛効果が期待できますが、国内では承認が降りていないためクリニックによっては取り扱いがないところもあります。
AGA治療の手順について
AGA治療の一般的な流れは下記となります。
① 問診票の記入
② 医師による問診と頭髪の状態確認
③ カウンセリング
④ 医師による血液検査と診察
⑤ 薬剤の処方
⑥ 1〜2ヶ月に1回程度の通院
AGA治療では医師が問診・視診を行い薄毛の原因がAGAかどうかを診断します。
治療の詳細はクリニックによって異なりますが、処方薬の服用を続け、定期的な通院により頭部の経過観察を行う流れはどのクリニックにも共通するものです。
AGA治療にかかる期間について
AGAの治療にかかる期間は人によって異なりますが、半年から1年程度は必要とされています。
ただし、注意しなければならないのは薄毛の改善がAGA治療のゴールではない点です。
「薄毛が治ったからもう大丈夫!」と投薬治療を中断すると、再びAGAが進行し元の状態に戻ってしまう可能性があります。
AGA治療には続けて行う姿勢が重要です。
定期的に医師による診察を受け、頭髪の状態や副作用の有無に応じて薬の種類や用量を調整していく必要があります。
またAGA治療を始めるのが遅くすでに重度の症状がある場合、薄毛の改善までに長い期間を要しかねません。
ヘアサイクルにも寿命があるため、手遅れになる前にクリニックに相談することをおすすめします。
AGA治療にかかる費用について
AGA治療の一般的な相場は、下記のとおりです。
治療内容 | 費用相場 |
初診・再診 | 無料~5,000円 |
検査 | 5,000~10,000円 |
処方薬(1ヶ月分) | 5,000~15,000円 |
上記を合わせると、AGA治療にかかる費用は月額10,000〜30,000円程度です。
血液検査やマイクロスコープ、遺伝子検査などのタイミングは初診時のみであったり数か月単位であったりするため、検査費用を毎回カウントする必要はありません。
薬代は処方薬によって相場が変わりますが、フィナステリドは5,000〜8,000円程度、デュタステリドは8,000〜10,000円程度、ミノキシジルは10,000円程度が一般的です。
なお、AGA治療は保険が適用されないため、自費での診療となります。
クリニックによって薬の費用にばらつきがあるため、予め治療にかけられる予算と正確な料金をクリニックに確認しておきましょう。
AGAが気になる方によくある質問
ここで、AGAを患う方や薄毛が不安な方によく挙がる疑問を紹介しましょう。
Q1 AGAは皮膚科でも治療できますか?
皮膚科でもAGAの治療は受けられます。
ただし皮膚科で可能な治療法は投薬治療に限られ、用いられるのはプロペシアやザガーロ、ミノキシジル外用薬のみである場合がほとんどです。
注入療法や自毛植毛、サプリメントの処方などは行っていないため、いろいろな治療法を試したい方には不向きでしょう。
また皮膚科ではAGA治療の実績が少なく、細やかな診断や治療が難しくなる可能性もあります。
Q2 AGAに効くおすすめの育毛剤はありますか?
基本的に育毛剤の使用だけでAGAを改善するのは不可能です。
育毛剤はあくまで今ある髪に栄養を与えたり頭皮を保湿したりするためのものなので、脱毛の防止や発毛の効果はありません。
薄毛の改善に育毛剤を取り入れたいのであれば、AGA治療と併用することをおすすめします。
Q3 女性もAGAになる可能性はありますか?
女性もAGAになる場合があります。
ただし、女性に起きるAGAはFAGA(女性男性型脱毛症)もしくはFPHL(女性型脱毛症)と呼ばれるのが一般的です。
FAGAは加齢や極端なダイエット、ストレスなどによるホルモンバランスの乱れが原因で起こります。
またAGAとは違い、脱毛が部分的にではなく全体的に進んでいくのもFAGAの特徴です。
AGA治療薬には女性の使用が禁止されているものもあるので、独断で対処せずクリニックを受診しましょう。
Q4 20代と30代ではAGAのなりやすさは違いますか?
AGAの発症率は年齢が上がると高まる傾向にあります。
日本皮膚科学会のガイドラインによれば、AGAの発症率は20代で約1割、30代で約2割とされており、30代のほうが20代よりも2倍高い確率です。
しかし、20代の薄毛も「若いから大丈夫」と放置していると重度の薄毛につながりかねません。
AGAが進行性の脱毛症であることを理解し、早めに対応することが大切です。
まとめ:AGAは早めの対処が大切!まずはクリニックに相談してみよう
男性の薄毛の大半はAGAによるものといわれています。
髪質の変化や生え際の後退があったり薄毛が気になったりする場合、まずはAGAの可能性を考えてみましょう。
AGAは治療で効率的に改善できます。
医師に不安や疑問を相談しながら、ご自身に合う治療法を検討されてみてください。
AGAは治療の開始が早いほど治療期間が短く済む可能性があるので、気軽にクリニックに相談してみましょう。